◎水俣病と差別という大変重たいテーマを企業や被害者という直接関わりのある人々からの視点ではなく、水俣に住んだ、あるいは住んでいる一般市民の立場からその苦しみや悩みを浮き彫りにし、将来への希望の光も示唆した素晴らしいラジオドラマだった
◎特に、脚本の素晴らしさに感動した
◎楽しく過ごした中学生時代の思い出の曲、カーペンターズの『yesterday once more』を取り入れることで、ただ辛い過去を振り返るだけでなく、あの楽しかった時代を思い出し、楽しいこともあった故郷『水俣』を表しているように感じられた
◎自分の過去を見つめて、当時は幼くて理解出来なかったことや、知らなかったことを懐かしい友人達と過ごすことで、振り返り返って、新たな気持ちで故郷『水俣』に思いを馳せ、家族との新しい絆ができていくストーリーは明るい気持ちで聴き終わることができた
◎大きな災害とともにある人生において(水俣病に限らず、天災も近年多々ある)、長い時間が経過して、ようやくたどり着ける和解もあるという結末は、長く生きることの意味、励ましの意味を大いに含んだ、良質なフィクションと感じた
◎善と悪が混在しながら、混沌とした差別の連鎖に苦しんできた家族、市民、地域の葛藤が、フィクションを上手に用いて、丁寧に描かれていた。分断を、風評被害を乗り越えようと奮闘する市民の姿、水俣病の呼称問題など、現代の課題もうまくストーリーに盛り込まれており、水俣病がまだ終わっていないとのメッセージが強く伝わってきた
◎ラジオドラマを久しぶりに聴いたが、耳だけを澄まして言葉や音楽に集中しながら、水俣の綺麗な海や街並みなど想像を膨らませて聴くことが出来て、とても新鮮な感じで最後まで楽しめた。インターネットや動画が盛んになっても充実した内容のラジオドラマであれば、今後も生き残って行くのではないかと思った
◎番組冒頭での肥薩おれんじ鉄道の列車が鉄橋を渡る音、水俣駅での構内放送などがとてもリアルで臨場感があり、番組の終わりも鉄橋を渡る音で終了となり、音響効果も印象的だった
◎内容も非常に分かりやすく聞き取りやすいため、水俣病を風化させないよう次世代に残していくためにも、ぜひ学校などの教育の場でも活用してほしい番組であった
◎最後に、水俣での周りの人々とのかかわりの中で、幸子が水俣に心を開いてく様子が、一時間をたっぷり使って違和感なく理解できるように描かれており大変良かった。このような水俣をめぐる状況は、経験した人しか分からないことも多いと思うが、長く、出来るだけ広く様々な形で伝えていくことが大切だと痛感した
◎フィクションと謳ってはあるが、事実に裏付けされた作品ほど人の心を打つものはないと感じた
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